ポートフォリオ

Artist Statement

身体性:私たちは主観的で曖昧な世界を、あたかも絶対的な現実であるかのように生きています。しかし、ふとした瞬間に、世界の見え方が一変することがあります。例えば、初めて水の中で目をあけた時のように、それまでの認識が覆される瞬間。その不安感と高揚感を作品を通じて共有したいと考えています。

私の作品は、視点や光によって変化し、多面的に見えることで、知覚の揺らぎを表現しています。こうした体験を通して、自己認識や記憶の曖昧さ、「主観と客観」といった、この世界の多面性を問いかけています。これは、「存在とは何か?」という普遍的な問いから生じる、私の一貫したテーマです。

空間性:その表現は、ペインティングからインスタレーションにまでおよび、自己から一体となる環境、地域への広がりを志向しています。

現代性:現代社会では、私たちの知覚は平滑化されていき、実体感を失いつつある。平滑化された、「正解」のような回答と身体がとらえた「実感」。私はそのズレを可視化し、身体と空間の再接続を図っています。

●制作を支える2つの軸

  1. Ref-rectionシリーズ:現在の制作の軸となっているシリーズ。知覚のゆらぎを通して、環境と自己との曖昧な境界を探る。光によって変化する色彩と空間に注目し、そのイリュージョン性を体験することで「見るとは何か」を問いかける。
  2. 記憶のインスタレーション:まちづくりや里山再生活動の経験から取り組んでいるシリーズ。消えゆくもの・失いつつあるものに注目し、それらを現代的にとらえ再構築することで、過去と現在をつなぎ、自己や地域のアイデンティティを問いかける。

1,Ref-rectionシリーズ:錯覚と知覚のゆらぎ

アクリル板と絵具による透過と反射が繰り返されることで、視覚が揺らぎ、光の作用によって作品の見え方が変化する。
Ref-rectionシリーズは、そうした視覚現象をテーマとしている。
「見ることとは何か?」アクリル板という新たな素材を通し、ペインティングの平面性を空間へと拡張し、身体を包み込むようなイリュージョンの実現を目指している。

「透明性のアーキテクト」
自宅での試作
もっと詳しく見る

2,記憶のインスタレーション

古い写真を元に、記憶を聞き取り、その土地にゆかりのある場所でインスタレーションを行うことで、個人的な記憶を地域的な記憶へと昇華させるプロジェクト。木片に写真を転写し、それらを記憶の場所に配置することで、記憶が場所と結びつく「場所性」を表現しています。

私自身もこのプロセスを行なってみると、「自分がここにいた」という実感がありました。それは、曖昧な記憶の断片が場所と結びつくことで自己の存在を肯定し、アイデンティティが確認される体験でした。集合体の記憶を可視化し共有することで、日本のくらし中で育まれてきたコミュニティの在り方にアプローチしてみたいと考えています。

/もっと詳しく見る